8月3日に米テキサス州エルパソのウォルマートで発生した銃撃事件。少なくとも20人が犠牲となり、後に容疑者はヒスパニック系を狙った単独犯だったと判明した。テキサス州の歴史において特に犠牲者の多い事件となったが、一人の男性がとっさの行動をとらなければ、さらに犠牲者が増えていたことがわかった。
【米テキサス州エルパソ・ウォルマート襲撃】『緊急事態、急いで走れ』
37歳のギルバート・セルナさんは人生の半分をエルパソのウォルマートで働いてきた。事件が起こった8月3日土曜日はシフトで店舗にいた。
「社内のトランシーバーから『緊急事態、急いで走れ』と慌てた声が聞こえたのです」と銃撃が始まった時のことをBuzzFeed Newsに語ったギルバート。そこからすぐに銃声が何発か聞こえた後、ギルバートは急いで100人ほどの客と店員を非常口に導き倉庫のなかに隠れた。
ギルバートはその時の様子を「彼らも怖かった。私も怖かった。みんな怖かったのです」と語った。
【米テキサス州エルパソ・ウォルマート襲撃】さらに多くの人を助けるため、危険を顧みず立ち向かったウォルマート店員「皆殺しにするつもりなのだと気づいたのです」
しかし、ギルバートはそこで行動を止めなかった。倉庫の中から出て、駐車場の方に向かってビルの脇を進んでいった。その駐車場には多数の人がおり、募金を集めていた女子サッカーチームもただ立ち尽くしていた。すると、一人の男性が「背の高い白人の男が発砲している」と叫んだ。そこで、ギルバートはこの犯人が無差別殺人を実行していると悟った――「皆殺しにするつもりなのだと気づいたのです」。
状況に気づいたギルバートは、駐車場にいた60人ほどの人を近くのSam’s Club (サムズ・クラブ、ウォルマートの会員制スーパー)に連れて行った。中には、銃撃を受けた人がおり、ギルバートは現実を目の当たりにしたという。「赤ん坊を抱いた血まみれの人の姿を忘れることができません」と後に語っている。
「ウォルマートでは銃撃を受けた際に身を守る方法を習います」と語ったギルバート。「ADDといいます。Avoid (避ける) Deny (拒否する) Defend (守る)です。銃撃犯の通り道を遮断し、ドアの前に物を置き、必要性があれば自分を守るのです」と話したが、最後にそのトレーニングを受けたのはいつか思い出せないほど前だという。
【米テキサス州エルパソ・ウォルマート襲撃】世界各国で続く銃乱射事件——銃を持たざるべきか、銃以前の問題か
犯人は白人国家主義の男で、2019年3月15日に起きたニュージーランド、クライストチャーチモスク銃乱射事件の犯人をたたえていた可能性があると言われている。
8月4日には米オハイオ州デイトンでも銃撃事件が起き、容疑者は自身の妹を含む9人を殺害。アメリカを始め、世界各国で銃乱射事件が続いている。動機や背景は様々であるが、多くの無差別殺人事件で使われている自動小銃はインターネットからも合法的に購入することができる。銃を持たざるべきか、銃以前の問題か、世界は重大な決断を迫られている。
アメリカ国内での銃撃事件をまとめているサイト『Gun Violence Archive』によると、2019年にアメリカ国内で起きた銃乱射件数は米オハイオ州デイトンの事件を含め251件目。
(画像は『buzzfeednews 2019年8月7日付Instagram』のスクリーンショット)
参考記事:【BuzzFeed News】Walmart Employee Gilbert Serna Saved 150 In El Paso Shooting
https://www.buzzfeednews.com/article/briannasacks/el-paso-shooting-walmart-employee-gilbert-serna-saved-150
【Gun Violence Archive】
https://www.gunviolencearchive.org/